玄米は健康に良い食品といわれており、ダイエットや筋トレなどでは白米より玄米を推奨されることが多いですよね。皆さんはこの理由をご存じでしょうか?本記事では、管理栄養士が玄米が健康に良いとされる理由と食べ続ける効果、白米との違いについて詳しく解説しています。玄米の良さを知るとあなたも取り入れてみたくなるはず。本記事を日々の健康管理に役立ててみてください。
玄米と白米はどう違う?
主食にはごはん、パン、麺類、イモ類などありますが、日本人の主食といえば、ごはん。ごはんにも玄米や白米、白米に雑穀やもち麦を混ぜたものなど種類は様々です。玄米も白米も主食としてよく食べられていますが、どう違うのでしょうか?まずは玄米と白米の違いを解説します。
そもそも玄米とは
そもそも玄米とは、どういうものなのでしょうか?お米となる稲の実には、皮である「もみがら」の中に茶色い玄米が入っています。玄米からさらに、玄米の皮である「米ぬか」をとると、白米である胚乳と、小さな芽と根がついた胚が出てきます。つまり、玄米は稲の実から「もみがら」のみを除いたもの、白米は玄米からさらに「米ぬか」と胚を取り除いたものということになります。稲の実の精白具合で玄米から白米まで、異なるお米になります。
白米と含まれる栄養素の違い
精米具合が違う玄米と白米ですが、見た目だけでなく含まれる栄養素も異なります。具体的には次の表の通りです。
玄米 | 白米 | |
エネルギー(kcal) | 346 | 342 |
タンパク質(g) | 6.8 | 6.1 |
脂質(g) | 2.7 | 0.9 |
炭水化物(g) | 74.3 | 77.6 |
ナトリウム(mg) | 1 | 1 |
カリウム(mg) | 230 | 89 |
カルシウム(mg) | 9 | 5 |
マグネシウム(mg) | 110 | 23 |
リン(mg) | 290 | 95 |
鉄(mg) | 2.1 | 0.8 |
亜鉛(mg) | 1.8 | 1.4 |
銅(mg) | 0.27 | 0.22 |
マンガン(mg) | 2.06 | 0.81 |
セレン(μg) | 3 | 2 |
ビタミンE(mg) | 1.4 | 0.1 |
ビタミンB1(mg) | 0.41 | 0.08 |
ビタミンB2(mg) | 0.04 | 0.02 |
ナイアシン当量(mg) | 8.0 | 1.2 |
ビタミンB6(mg) | 0.45 | 0.12 |
葉酸(μg) | 27 | 12 |
パントテン酸(mg) | 1.37 | 0.66 |
ビオチン(μg) | 6.0 | 1.4 |
食物繊維(g) | 3.0 | 1.0 |
(100gあたり)
日本食品標準成分表2020年版より
炭水化物、タンパク質、脂質の三大栄養素をみてみると、白米の脂質が1/3と少なくなっていますが、その他は大きく変わらず、エネルギー量もほとんど変わりません。しかし、ミネラル、ビタミン、食物繊維をみてみると、いずれも玄米の方が多く含まれていることがわかります。特に、ミネラルで言うとカリウム、マグネシウム、鉄、ビタミンではビタミンB群が玄米で多くなっています。玄米は米ぬかや胚がついている分、白米よりもビタミンやミネラル、食物繊維が多く含まれているのです。
玄米が健康に良い理由とは
玄米が白米よりもビタミンやミネラル、食物繊維を多く含んでいることは先ほどの項目で説明しました。栄養価が高いため健康に良いと言われています。では、これらの栄養素を多く含むことがなぜ健康に繋がるのかを詳しく見ていきましょう。
玄米には身体に必要な栄養素が多い
玄米は白米と比較すると多くの栄養素を多く含んでおり、特に健康に重要な役割をする栄養素が多くなっています。具体的には以下の4つの栄養素を多く含んでいます。それぞれの栄養素とその効果について確認していきましょう。
ビタミンB群
ビタミンB群は、栄養素をからだの中で代謝する(利用できる形にする)ために必要な栄養素です。例えば、糖質からからだを動かすためのエネルギーを作る際にはビタミンB1やB2、ナイアシン、パントテン酸が必要です。中性脂肪を分解して脂肪酸をエネルギーとして消費するためにはビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸が、タンパク質の代謝にはビタミンB2やビタミンB6が使われます。特に筋トレやダイエットをされている方はビタミンB群の消費量が多いので、主食に玄米が推奨されることが多いです。
マグネシウム
マグネシウムはからだの中の様々な働きを助ける栄養素です。エネルギーの生産や栄養素の生合成・分解以外にも、遺伝情報の伝達、神経伝達、筋収縮の制御、血圧の低下作用、血栓を作りにくくするなどの働きがあります。短期的なマグネシウムの欠乏は食欲不振やふるえ、吐き気などの様々な不調の原因となり、長期的に欠乏すると骨粗鬆症や心疾患、糖尿病のような生活習慣病のリスクが上昇することも報告されています。過剰摂取では軽度の下痢が起こりますが、不足しないようにすることが健康の維持にとても重要な栄養素であると言えます。
鉄分
鉄は、赤血球の材料になり、全身に酸素を届ける役割があります。また、からだの機能をサポートする酵素の構成にも関わっています。鉄が欠乏すると貧血や運動機能、認知機能の低下を招きます。サプリメントによる過剰摂取では死亡率の上昇や慢性疾患の発症を促すことが報告されており、摂りすぎには注意が必要ですが、鉄もその他の栄養素同様、健康維持に重要な栄養素です。
食物繊維
食物繊維には水に溶けやすい水溶性食物繊維と、溶けにくい難消化性の食物繊維があります。水溶性食物繊維は、小腸での栄養素の吸収を穏やかにし、食後の血糖値の上昇を抑えたり、コレステロールを吸着させて血液中のコレステロール値を下げたりしてくれる効果があります。難消化性食物繊維は、水分を吸収して便の容積を増やし、大腸を刺激することで排便を促してくれます。どちらの食物繊維も大腸で腸内細菌のエサとなり、善玉の腸内細菌を増やすため、腸内環境の改善に役立ちます。これらの役割から、生活習慣病の発症や乳がん、胃がん、大腸がんの発症リスクの低下に役立つとの報告が多くあります。日本人の食事摂取基準では、1日の食物繊維の目標量は20g程度とされてます。意識して摂取しないと到達が難しい量なので、主食からも食物繊維を摂ることができれば目標量に到達しやすくなります。
低GI食品のため血糖値を上げにくく、太りにくい
玄米には色々な栄養素を多く含むということ以外にも、低GIのため血糖値を上げにくく、太りにくいという特徴もあります。なぜ血糖値が上がりづらいと太りづらいのか、また低GIとはどんな指標なのかについても確認しておきましょう。
低GIとは
GIとはGlycemic Index(グリセミック・インデックス)の略で、食後の血糖値の上昇を示す指標のことです。食品に含まれる糖質の吸収度合いを示し、摂取2時間までの血液中の糖の量を測って指標にしています。血糖値の上昇が急激なものほどGI値が高く、緩やかなものほど低くなります。GI値が70以上のものを高GI食品、56~69のものを中GI食品、55以下のものを低GI食品と定義されています。白米のGI値は88で高GI食品、玄米は55で低GI食品となっています。玄米は低GI食品であり血糖値を上げにくいということも、健康に良いと言われる理由の一つです。
血糖値が上がりにくいと太りづらい理由とは
血糖値が上がりにくいことが、なぜ健康に良いのでしょうか?食べたものの糖質が分解されるとブドウ糖となり、小腸で吸収されて血液中にいきわたります。血液中のブドウ糖が多い(血糖値が高い)と血管を傷つけてしまうため、ブドウ糖を減らすために細胞に取り込まなければいけません。細胞に糖を取り込む役割を担うのがインスリンというホルモンです。インスリンは細胞に糖を取り込んで血糖値を下げる以外にも、筋肉の合成や脂肪の合成を行います。血糖値が急激に上昇すると、その分大量にインスリンが分泌されるため、脂肪の合成量も増えてしまい、太ってしまいます。そのため、血糖値の急激な上昇を避けることが太りにくさにも繋がるのです。
ストレスを緩和し、精神の健康にも役に立つ
玄米の油分には「γ-オリザノール」という成分が含まれており、脳内ストレスを減らす役割があることが注目されています。脳内ストレスというのは、動物性脂肪を求めるような脳内のストレスの一種のことです。γ-オリザノールはおいしさや幸福感を与えることで脳内ストレスを減らし、肥満や2型糖尿病の予防や改善に役立つことが期待されています。
玄米を食べつづけることによる効果
栄養価が高く、太りにくい上に腸内環境の改善や生活習慣病の予防など嬉しい効果が期待される玄米。単発で食べることでは効果を実感しにくいため、長期的に継続して食べることが大切です。では、玄米を食べつづけることで実際にどのような効果を実感できのできるのかを紹介します。
腹持ちが良くなる
玄米は米ぬかが含まれている分、白米よりも食物繊維が多いため消化と吸収に時間がかかります。そのため、腹持ちがよくなります。また、白米と比較すると硬い炊き上がりになるため噛む回数が自然と増え、満腹感も得やすいです。食べすぎや間食を防げるというのも太りにくくしてくれるため嬉しいポイントです。ダイエットをしている人に特におすすめです。
お通じが良くなる
先ほどの項目で難消化性食物繊維は水分を吸着して便量を増やすため、大腸を刺激して排便を促すことを紹介しました。腹持ちの効果と同様、お通じの改善もすぐに得やすい効果です。特に便秘に悩まれている方は、主食を玄米に変更することを試してはいかがでしょうか。
腸内環境が良くなる
食物繊維は大腸で腸内細菌のエサとなり、善玉の腸内細菌を増やすため、腸内環境がよくなります。腸内環境が改善することによる効果は多岐にわたり、長期的にみると2型糖尿病や心疾患、がんなど様々な病気の予防に繋がります。また、比較的短期的な効果としては肌質の改善など、女性に嬉しい効果も得られます。
玄米を食べる際の注意点とは
食べ続けることのメリットが多い玄米ですが、注意点もいくつかあります。玄米の効果を発揮しやすくすることに繋がりますので、どのような注意点があるのか、その詳細と対策についてご紹介します。玄米食をはじめようと考えている方は、ぜひ事前にご確認しておくといいでしょう。
玄米だけでは不足する栄養素がある
1つ目は、いくら栄養価が高い食品とは言え、玄米だけでは不足する栄養素があるということです。玄米だけに偏ってしまうと、他の食品を一緒に食べるときと比べ、摂取しているカロリーの割にタンパク質や脂質の割合が減ってしまいます。また、ビタミンAやビタミンCなど、玄米には含まれていない栄養素もあります。そのため、玄米は主食とし、必ず1日3食、毎食主食・主菜・副菜を揃えてバランスよく食べることを前提としてください。
消化不良にならないように注意する
2つ目の注意点は消化不良にならないようにするということです。白米と比較すると硬く、食物繊維が多い上に、お米は1粒1粒が小さいため、あまり噛まずに飲み込んでしまうことで消化不良を起こしやすくなります。少量ずつ、よく噛んで食べるようにしましょう。また、体調や胃腸の調子が悪い時は無理に食べないようにするということも大切です。
まとめ
本記事では玄米と白米の違いについて、特に健康面に着目して解説しました。玄米はからだに重要な役割を担う栄養素が豊富で、腸内環境の改善や肥満の予防に繋がります。長期的にみると、さまざまな病気の予防にも役に立つことから健康に良いと言われています。食べ続けることのメリットの多い食品ですので、こちらの記事を参考に普段の主食を玄米に変えてみるのはいかがでしょうか。