「玄米が腸活に効果的」という話を聞いたことがあっても、その理由まで深く理解している人はあまり多くはないかもしれません。玄米というと「健康に良い」「ダイエットに効果がある」などと言われることが多い食品ですが、その理由と玄米が腸活に向いている理由には密接な関係があります。
本記事では、腸活とは何かというところから、玄米が腸活に向いている理由やさらに効果がアップするおすすめの組み合わせ食品などについて解説します。
腸活には玄米がおすすめ
健康維持やダイエットに向いている玄米は、腸活にもおすすめの食品です。健康や痩せやすい、太りにくいといった体質には「腸」が大きく関係していて、腸の状態が良いと、これらにも良い影響を与えます。玄米が健康やダイエットにおいて注目されている理由には、「玄米が腸活にも効果的であるから」という事柄も含まれているのです。
主食となる玄米は、日々の食生活に取り入れやすく続けやすいのも、腸活におすすめの理由の1つです。
腸活とは腸内環境を整えること
まず腸活とは、腸内環境を整えて腸の働きを正常に保つことです。腸は必要な栄養を吸収し有害な物質を排出する、健康を保つ上でとても重要な臓器です。また、腸は第二の脳とも言われ、腸と脳は迷走神経で繋がっているため身体に与える影響も大きいのです。腸活によって腸が持つ本来の力を取り戻すことは、健康な身体づくりの基礎となります。
「腸内フローラ」を理想のバランスに
人間の腸内には、約1,000種類、約10,000兆個もの細菌が存在しており、腸の中を顕微鏡で見ると腸壁に張り付いた細菌がお花畑(flora)のように見えることから、「腸内フローラ」と呼ばれています。この腸内フローラのバランスによって、腸内環境の良し悪しが決まります。
腸内細菌の種類として、腸内環境を整えてくれる「善玉菌」、毒素を排出する「悪玉菌」、腸内が健康なときは善玉菌の味方になり、悪くなると悪玉菌の味方になってしまう「日和見菌」の3種類があります。悪玉菌は身体にとって悪いことだけでなく、たんぱく質を分解するなどの必要な働きも持つため、これらの理想のバランスは「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」の割合とされています。
腸内環境が乱れる要因は?
腸内環境が悪化している状態とは、この腸内フローラのバランスが乱れているということです。肉や脂っこい食事が多いときや、野菜や海藻、穀物などに含まれる食物繊維の摂取量が少ないとき、ストレスが溜まっているとき、不規則な生活が続いているときなど様々な要因によって起こります。
腸内環境が悪化するとどうなる?
腸内環境が悪化すると、便秘や下痢などのお腹の不調に加えて、にきびなどの肌荒れも引き起こします。さらに、免疫力の低下や生活習慣病を引き起こしやすくなるなど、健康面において大きな悪影響を及ぼします。特に、便秘が続くと腸内環境が悪化し、さらに便秘が治りにくくなるという悪循環に陥ります。
腸活のメリットとは?
腸活とは腸内環境を整えることであり、身体にとって様々な良い影響を与えます。それぞれの項目について詳しくみていきましょう。
- 免疫力がアップする
- 便秘や下痢の予防と改善
- 美肌効果が期待できる
- ダイエット効果が期待できる
1.免疫力がアップする
呼吸や食事の度に口や鼻から侵入する細菌やウイルスは、そのまま腸にまで達します。そしてそのときに活躍するのが、腸に存在する免疫細胞です。腸内には、身体の免疫細胞の約6割が存在していると言われているため、腸内環境を整えて本来の働きを取り戻すことは、細菌やウイルスに負けない身体づくりのためにとても重要と言えます。
2.便秘や下痢の予防と改善
便秘や下痢は、腸内で悪玉菌の割合が増えることで起こりやすくなると言われています。腸活をし腸内フローラのバランスが整うことで、便秘や下痢が起こりにくい状態を作ることができます。
3.美肌効果が期待できる
肌荒れの原因の1つとして、腸内環境の悪化が挙げられます。腸内環境の悪化により腸内に便が停滞すると、悪玉菌が増え有害物質を生成します。この有害物質が体内をめぐり肌にも到達すると、にきびや吹き出物などの肌トラブルを引き起こします。腸活により有害物質の生成を阻止することで、トラブル知らずな健康な肌へと導きます。
4.ダイエット効果が期待できる
ダイエットに効果的とされる栄養素を摂取しても、腸において正常に消化・吸収をする力がなければあまり意味がありません。むしろ、ダイエットの大敵である便秘や下痢を引き起こします。腸活により本来の腸の消化・吸収力を取り戻すことで、必要な栄養素は吸収しそれ以外は排出するという力が高まり、結果ダイエットにもより効果的ということになります。
腸活のやり方
腸活の基本は、「食事」「運動」「睡眠」の3つです。このうち1つでも極端に乱れてしまうと、他の2つも乱れやすくなるという悪循環に陥ります。基本の3つを同時に正した効率的な腸活が1番の近道です。
- 栄養バランスの整った食事を摂る
- 適度な運動を行う
- 良質な睡眠を取りリラックスできる時間を作る
- 腸をマッサージする
1.栄養バランスの整った食事を摂る
腸活には、善玉菌を含む食品「プロバイオティクス」と、善玉菌のエサとなる食品「プレバイオティクス」を一緒に摂ることが大切です。善玉菌には、乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌・麹菌・酢酸菌などがあります。そして善玉菌のエサとなるのは、食物繊維やオリゴ糖です。これらが豊富に含まれる食品を積極的に毎日摂取することで、腸内環境が整いやすくなります。
基本は様々な食品をバランス良く食べることで、自然と腸活に良いとされる食品も取り入れられるようになります。
2.適度な運動を行う
適度な運動により筋肉を鍛えることで、血行が良くなり全身に酸素と栄養素が行き渡りやすくなります。また、腸の蠕動(ぜんどう)運動が鈍ることで、便を排出する力が低下し、便秘や下痢などの不調を引き起こしやすくなります。
蠕動運動は、特に運動不足や加齢などによって動きが鈍ってしまうので、全身のストレッチや、血流ポンプの働きがあるふくらはぎを鍛えるようなマッサージ、運動を意識的に取り入れるのがおすすめです。
3.良質な睡眠を取りリラックスできる時間を作る
第二の脳とも言われる腸は、自律神経と密接な関係があり、お互いに影響を及ぼし合います。自律神経とは交感神経と副交感神経の2種類あり、それぞれが優位になることで腸の収縮と弛緩が行われます。
活動している時間が長いと交感神経が優位になりやすいため、副交感神経を優位にしバランスを良くするには、良質な睡眠を取りリラックスする時間を作ることが大切です。
良質な睡眠を取るには、寝る3時間前には食事を済ませ、寝る前の飲酒やスマートフォンなどの操作を控えるようにしましょう。39℃程度のぬるめのお湯に15分ほど浸かり、心身ともにリラックスした状態で布団に入るようにするのがおすすめです。
4.腸をマッサージする
基本の3つの他に、物理的に腸の蠕動運動を促すマッサージもおすすめです。両手の平をお腹の上に置き、時計回りに円を描くように大きくぐるぐると20回程度マッサージします。1日に数回気づいたときに行うことを習慣化すると、より腸活の効果が期待できます。
腸活に「玄米」がおすすめな理由
腸活におすすめの食品はいくつかあり、その1つが「玄米」です。また玄米は白米と比較してビタミンやミネラル、鉄分、食物繊維などの栄養素が豊富で、様々な栄養素を摂取をしながら腸内環境を整えることができるのです。その他にも、腸活に玄米がおすすめである理由についてみていきましょう。
- 玄米には白米の約6倍食物繊維が豊富
- 良く噛んで食べることで腸が刺激される
- 無理なく取り入れやすい
1.玄米には白米の約6倍食物繊維が豊富
食物繊維には水に溶ける「水溶性」と溶けない「不溶性」の2種類あります。玄米に特に豊富なのは不溶性の食物繊維で、便のかさを増やし腸の蠕動運動を活性化することで排便を促す働きがあるため、腸活には必要不可欠な栄養素です。玄米には白米の約6倍もの量の食物繊維が含まれているため、腸活に向いていると言えます。
2.良く噛んで食べることで腸が刺激される
玄米は白米よりも噛み応えがあるため、自然と噛む回数が増えます。良く噛んで食べること腸が刺激され蠕動運動が活発になり、スムーズな排便を促します。
さらに、良く噛むことで食べ物が細かくなり、消化酵素が速やかに作用します。すると、なるべく胃腸に負担をかけずに必要な栄養素は無駄なく吸収され、不必要なものだけが便として排出されるようになります。
3.無理なく取り入れやすい
玄米は主食となるため、毎回の食事の中に取り入れやすいというメリットがあります。不溶性食物繊維は他に豆や野菜にも含まれますが、普段の白米を玄米に置き換えるだけで手軽に摂取量を増やすことができるため、腸活におすすめの食品と言えます。
腸活におすすめな玄米の種類
玄米にはいくつかの種類があります。それぞれの特徴を理解し、好みやライフスタイルに合った種類の玄米を見つけてみると良いでしょう。
より食物繊維が豊富な「酵素玄米(寝かせ玄米)」
酵素玄米(寝かせ玄米)とは、玄米を小豆と塩と一緒に炊き、さらに3日間保温して熟成させた玄米です。熟成により酵素の働きが活性化し、さらに栄養価がアップします。特に交感神経の働きを抑える働きを持つGABA(ギャバ)が増えることで、神経を落ち着かせストレスの緩和や睡眠の質を整えるなどの効果も期待できます。
また、小豆の栄養も加わることや、小豆によるうま味や香ばしさも加わり、より味わい深い美味しさに仕上がります。酵素玄米は、通常の玄米、乾燥小豆、天然塩からご家庭で作ることができ、炊飯器で3日間寝かせるというひと手間がかかりますが、その美味しさと栄養価は抜群です。
酵素の力で栄養価アップ「発芽玄米」
発芽玄米とは、玄米を生米のままわずかに発芽させたものです。発芽による酵素の活性化で、糖質が分解されアミノ酸が増えることで、通常の玄米よりもうま味が豊富です。また、酵素の活性化によってさらに栄養素もアップします。酵素玄米同様に、GABA(ギャバ)が増えることで腸活への効果もより期待できるようになります。発芽玄米は、通常の玄米からご家庭でも作ることができます。
玄米に抵抗があるなら「分つき米」
分つき米とは、玄米から白米へと精米する過程で、その精米率を調節した玄米と白米の間のようなお米です。白米の精米率を10、玄米を0とすると、何割精米したかによって「3分づき米」「5分づき米」「7分づき米」の3種類に分けられます。数字が大きいほど白米に近く、小さいほど玄米に近いということです。
分つき米は、玄米の栄養価と白米の美味しさをバランスよく得られるのが魅力で、玄米特有の食感が苦手な人や、玄米初心者、子どもにもおすすめです。いきなり玄米に変えるということに抵抗がある場合、少しずつ精米率を低くして慣れていくのもおすすめです。
玄米の食感が苦手なら「ロウカット玄米」
ロウカット玄米とは、玄米の表面にあるロウ層という固い層を、特殊な製法によりカットした玄米です。通常の玄米にはロウ層がついたままですが、このロウ層は固くパサパサとした食感の原因になるため、取り除くことで中心まで水が吸収され柔らかく炊きあが瑠葉になります。
白米との違いは、栄養が豊富なぬかや胚芽は残したままであるということで、玄米と白米の両方の良さが活かされています。
玄米の腸活効果がさらにアップするおすすめの組み合わせ食品
玄米による腸活効果を高めるには、玄米に組み合わせる他の食材にも意識を向けてみましょう。腸活に良いとされる、「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」のうち、食物繊維が豊富な玄米は「プレバイオティクス」にあたります。そのことを頭に置いて、組み合わせを意識してみると良いです。
「発酵食品」味噌・しょうゆ・漬物・キムチ・ヨーグルト・チーズ・納豆
乳酸菌やビフィズス菌、酵母菌、麹菌などの善玉菌が含まれているプロバイオティクスです。継続的に食べるとより効果的ですが、塩分が高めな食品もあるので食べ過ぎには注意しましょう。
「乳酸菌」ヨーグルト・乳酸飲料・チーズ・甘酒
乳酸菌は、発酵食品の中に多く含まれているプロバイオティクスです。玄米との組み合わせはやや難しいかもしれませんが、朝食や小腹が空いたときの間食として取り入れるのもおすすめです。
「納豆菌」納豆
納豆菌は、胃酸によって溶けることもなく生きたまま腸に届くというのが特徴です。納豆の原料は大豆ですが、大豆に納豆菌をかけて発酵することで効果が発揮できるので、大豆にはなく納豆にのみ存在する種類の菌です。玄米ごはんに納豆をかけて食べるだけで、とても腸活に優れた1品が完成します。
「オリゴ糖」はちみつ・バナナ・たまねぎ・大豆
オリゴ糖は、善玉菌のエサとなるプレバイオティクスで、胃酸や消化酵素で分解されずに生きて腸まで届きます。腸内の善玉菌を増やす働きがあることから、特定保健用食品としても認められています。
ただし、オリゴ糖は多く摂りすぎると下痢やお腹の張りを引き起こすこともあるため、摂りすぎに注意が必要です。砂糖の代わりにはちみつを使用して調理をするのも良いでしょう。
「不溶性食物繊維」玄米・さつまいも・ごぼう・きのこ・海藻・豆類
不溶性食物繊維は、腸の蠕動運動を促し便のスムーズな排出を助けるため、便秘の解消に特に効果が期待できます。玄米もこれに該当しますが、副菜などでさらに他の食品もバランス良く組み合わせることを意識しましょう。
「水溶性食物繊維」果物・オクラ・モロヘイヤ・昆布・わかめ
水溶性食物繊維は、不溶性食物繊維とセットで取り入れたい栄養素です。便を程良い固さにしてくれるため、よりスムーズな排便を促します。また、腸内で溶けて有害物質を身体の外へと排出してくれます。オクラやモロヘイヤなどのネバネバ野菜や、海藻類などに多く含まれるため、副菜や汁物として玄米と組み合わせると、より高い効果が期待できます。
まとめ
腸の健康について意識することは、全身の健康に関わるとても大切なことです。腸の働きや全身との関係について理解した上で、適切に腸活に取り組むことが、効果的な腸活の近道です。
玄米は、健康維持やダイエットと同様に腸活にも効果的な食品で、腸活をしようと無理に意気込むことなく、主食から取り入れていける手軽さも魅力です。玄米にはいくつかの種類があるので、自分の好みやライフスタイルに合った種類の玄米を探して、ぜひ腸活に取り組んでみてください。