「寝かせ玄米」は、独特の食感が苦手とされることの多い玄米のイメージを覆す、モチモチとした食感が美味しく食べやすい玄米です。通常の玄米にひと手間加えることで、玄米の高い栄養価がさらにアップし、さらに魅力たっぷりな玄米へと仕上がります。本記事では、「寝かせ玄米」とはどんな玄米であるか、健康やダイエットへの効果などを解説するとともに、炊飯器や圧力鍋での美味しい炊き方をご紹介します。
「寝かせ玄米」は「酵素玄米」とも呼ばれている
寝かせ玄米とは、玄米と小豆と塩を一緒に炊いて3日間保温し寝かせたものです。その過程で玄米特有のパサパサとした食感がなくなり、モチモチ食感へと変わります。
また、寝かせることで酵素の働きが活性化し、通常の玄米ご飯よりもさらに栄養価がアップします。そのことから、「酵素玄米」とも呼ばれています。
酵素にはどんな働きがある?
酵素とは主にたんぱく質でできていて、消化、吸収、代謝など身体のありとあらゆる反応において必要不可欠なものです。通常は体内で作り出されますが、加齢や様々な理由から酵素が作り出される量が少なくなってしまうと、身体の調子も悪くなってしまう可能性があります。またストレスや不規則な生活、偏った食生活などによって、酵素は消耗されてしまうとも言われています。
そこで食事由来の酵素を積極的に摂取することで、身体の調子を整えやすくする効果が期待できます。酵素は、生野菜や果物、刺し身などの加熱調理していない食品に含まれます。
酵素の力で玄米の栄養価がさらにアップ
「寝かせ玄米」においては、3日間寝かせている間に、ぬかの部分に含まれる酵素が発酵することで、より酵素の働きが活性化されます。栄養価が高いと言われている玄米ですが、酵素の働きが活性化することで、ビタミンやミネラル、アミノ酸、食物繊維、GABA(ギャバ)などの栄養素がさらにアップします。
玄米が「完全栄養食」とも呼ばれている4つの理由
玄米は、健康を保つ上で必要不可欠とされている栄養素のほとんどが摂取できるため「完全栄養食」とも呼ばれています。玄米を精米することで精白米となりますが、その過程で取り除かれる「胚芽」や「ぬか」の部分に栄養素が豊富に含まれているため、精白米に比べて玄米はより無駄なく栄養素が摂取できるのです。
では、玄米に豊富に含まれる主な栄養素とその効能から、玄米が「完全栄養食」とも呼ばれている以下の4つの理由について見ていきましょう。
- 身体の調子を整える「ビタミン」が豊富
- 貧血予防に役立つ「鉄分」が豊富
- 腸内環境を整える「食物繊維が豊富」
- 「低GI食品」で食後血糖値の上昇が緩やか
1.身体の調子を整える「ビタミン」が豊富
玄米には、ビタミンB1やビタミンB6などのビタミンB群が豊富なため、身体の様々な機能や代謝に働きかけ調子を整える効果が期待できます。
ビタミンB1は、糖を分解しエネルギーへと変換するときに必要なビタミンです。不足すると十分なエネルギーが作り出せず、糖をエネルギー源としている脳や神経に影響が現れ、疲れやだるさを感じるようになります。
ビタミンB6は、主に体内でアミノ酸の働きをサポートします。他にも、免疫機能を正常に働かせる役割や、皮膚の抵抗力を強める役割、ヘモグロビンを合成する役割などを持ちます。不足すると、口内炎や皮膚炎、貧血、免疫機能の低下などの症状が現れる可能性があります。
2.貧血予防に役立つ「鉄分」が豊富
鉄分は、ヘモグロビンの構成成分となり、全身に酸素を運びます。鉄分が不足すると、当然身体の隅まで酸素が十分に供給されにくくなり、鉄欠乏貧血を引き起こします。集中力の低下や、頭痛、食欲不振、疲労感などの症状が現れる可能性もあります。
玄米には鉄分が豊富に含まれていますが、肉や魚、卵などのたんぱく質源や、ビタミンCを多く含む野菜、果物を組み合わせることでより吸収率をアップさせることができます。
3.腸内環境を整える「食物繊維が豊富」
食物繊維は、整腸作用があり便秘の予防や改善に役立ちます。また、脂質や糖、ナトリウムなどを吸着して身体の外に排出する働きも持つため、これらを余分に摂取することで引き起こされる肥満や脂質異常症、糖尿病、高血圧などの生活習慣病の予防や改善にも役立ちます。
4.「低GI食品」で食後血糖値の上昇が緩やか
ある食品を食べたあとの血糖値の上昇度合いを示す指標に、「GI値」というものがあります。血糖値が上昇すると、下げようとする働きのある「インスリン」というホルモンが分泌されますが、インスリンには脂肪の合成を促す作用もあります。つまり、血糖値が急上昇するほどインスリンの分泌量が増え、脂肪の合成も促進してしまうということです。
GI値は、高・中・低の3つに分類され、玄米はそのうち「低GI食品」に分類されています。これは、玄米は食べたあとの血糖値の上昇度合いは比較的緩やかであるということを示しています。低GI食品を選んで食べることは、肥満の予防にも繋がります。
寝かせ玄米を食べることで期待できる6つの効果とは
通常の玄米でも、豊富な栄養素により様々な効果が期待できます。そして寝かせる過程や小豆が持つ栄養素により、さらに以下の6つの効果が期待できるようになります。
- 血液がサラサラになる
- 腸内環境の改善
- 血糖値の急上昇を抑える
- むくみ改善
- アンチエイジング
- 精神安定の効果
期待できる効果の詳細について、確認していきましょう。
1.血液がサラサラになる
GABA(ギャバ)には、血中の中性脂肪やコレステロール値を下げる働きがあるため、血液をサラサラにする効果が期待できます。血液の詰まりは動脈硬化などを引き起こす恐れがあるため、血液のスムーズな流れを維持することは、健康においてとても重要です。
2.腸内環境の改善
玄米に豊富に含まれる食物繊維の働きにより、腸内環境の改善が期待できます。寝かせ玄米では、酵素による働きと小豆により食物繊維の含有量がさらに増加するため、より高い効果をもたらします。
3.血糖値の急上昇を抑える
玄米は低GI食品であり、食後の血糖値の上昇は比較的緩やかな食品とされています。そして小豆に含まれるポリフェノールには、血糖値の上昇を抑える作用があります。通常の玄米よりも、より高い効果が期待できます。
4.むくみ改善
小豆にはカリウムが豊富に含まれています。カリウムには、身体の水分バランスを保ち、過剰なナトリウムを排出して正常な血圧を維持しようとする働きがあります。これによりむくみの改善や予防の効果が期待できます。
5.アンチエイジング
小豆に豊富に含まれるポリフェノールには、抗酸化作用があります。シミやシワの原因ともなる活性酸素を除去する働きがあるので、玄米のもつ栄養価に加えて小豆が加わることで、さらにアンチエイジング効果や美肌効果が期待できます。
6.精神安定の効果
炊いた玄米を寝かせることで、GABA(ギャバ)の含有量が増え、精神安定の効果が期待できるようになります。GABA(ギャバ)は神経伝達物質の1つであり、ストレスや脳の興奮を鎮める働きや、血圧を下げる効果などが期待できると言われています。質の良い睡眠にも繋がり、根本から健康的な身体へと導いてくれます。
寝かせ玄米はダイエットに効果的なのか?
玄米自体の栄養素による働きや、寝かせることでさらに期待できる効果などから、寝かせ玄米はダイエットにも効果が期待できるということが言えます。
便秘の改善による代謝アップ、血糖値の急上昇を抑制、身体の様々な代謝や機能の維持、むくみの改善などの様々な効果により、健康維持だけでなく太りにくく痩せやすい身体づくりを根本からサポートしてくれます。
炊飯器での寝かせ玄米の作り方
寝かせ玄米はご家庭でも作ることができます。炊飯器を使った寝かせ玄米の作り方の手順は以下の通りです。
- 材料を計量
- 分量の玄米と小豆を合わせて良く洗う
- 分量の塩と浸水用の水を加える
- 浸水する
- 炊き上がったら時々混ぜながら3日間保温
各工程の詳細について確認していきましょう。
手順1.材料を計量
まず材料を計量します。玄米3合(450g)に対し、小豆30g、天然塩4g弱、水680mlが美味しく炊き上がる分量の目安です。お好みの分量で調節してください。水加減は玄米の1.5倍程度が目安です。
手順2.分量の玄米と小豆を合わせて良く洗う
材料を計量したら、大きめのボウルに玄米と小豆を入れ、洗米用の水を加えます。1回目の水はすぐに捨て、きれいな水に取り替えるのがポイント。はじめの水はお米に吸水されやすいので、水と一緒に不純物などが吸水されないようにするためです。
水を変えながら泡だて器でしっかりと混ぜる工程を、繰り返し3~5回程度行います。泡だて器を使うことで玄米の表面に傷が付き、水が浸透しやすくなります。
手順3.分量の塩と浸水用の水を加える
洗い終わった玄米と小豆、さらに分量の天然塩と玄米が浸かる程度の水(分量外)を加え、全体が均一に混ざるようにかき混ぜます。
手順4.浸水する
そのままの状態で、涼しい時期は常温、夏は冷蔵庫に保管し、6時間程度しっかりと浸水します。ただし、炊飯器に玄米モードがある場合は、吸水の時間が含まれていることもあります。炊飯器の取扱説明書などを確認し、推奨されている浸水時間で行うと良いでしょう。仕上がりを見て、お好みで2~3時間浸水の時間を設けてみるなど調整してください。
手順5.炊き上がったら時々混ぜながら3日間保温
浸水が終わったら、浸水していた水は一旦捨てて、玄米と小豆を炊飯釜に移します。分量の水を加え、炊飯器の炊飯スイッチを押します。
炊き上がったら、そのまま15分ほど蒸らします。そのあと、しゃもじで上下を返すように混ぜ、そのまま再び蓋を閉じて3~4日間保温モードで寝かせます。保温期間中は、必ず1日1回上下を返し混ぜるようにしてください。
熟成が進むことで、徐々に色が濃くなり赤飯のような見た目に仕上がります。長い熟成時間を経て、香ばしい香りが漂う「寝かせ玄米」が完成です。
圧力鍋での寝かせ玄米の作り方
次に圧力鍋を使った寝かせ玄米の作り方をご紹介します。上述した炊飯器での作り方と一部重なりますが、圧力鍋は水加減の目盛りが付いていないため、水の計量を正しく正確に行うのがポイントです。
手順1~4までは炊飯器と同様
材料の計量から浸水までの過程は、炊飯器で炊く場合と同様に作ります。炊飯器のように玄米モードはないため、浸水時間はしっかりと設けることがポイントです。夏は冷蔵庫で、涼しい時期は常温で保管し、浸水させます。
手順5.圧力鍋で炊く
浸水が終わったら、浸水していた水は一旦捨てて、玄米と小豆を圧力鍋に移します。分量の水を加え、圧力鍋を中火で火にかけ、圧力がかかったら弱火にして20分加圧します。
手順6.炊き上がったら火を消して蒸らす
炊き上がったら火を消して、自然に圧が抜けるまでそのまま置きます(蒸らす)。圧力が抜けたら蓋を開けます。圧力鍋によって差があるので、使い方や水加減、加圧時間、蒸らし時間などは様子を見ながら調節してください。
手順7.炊飯器に移して寝かせる
炊き上がった玄米を炊飯器に移して、上下を返すように全体を混ぜます。保温モードで3日間寝かせます。炊飯器で炊く場合と同様、寝かせている間は必ず1日1回かき混ぜます。寝かせるほどに色が濃くなり香りも香ばしくなっていきます。長い熟成時間を経て、香ばしい香りが漂う「寝かせ玄米」が完成です。
寝かせ玄米が通常の玄米よりも美味しくなる3つの理由とは
寝かせ玄米は、玄米よりもさらにアップした高い栄養価はもちろん、より香ばしく風味良く仕上がるのも魅力の1つです。3日間寝かせることで、寝かせ玄米が通常よりも美味しくなるのには、主に次のような理由があります。
- 小豆を加えることで風味良く
- 塩を加えることでお米独特の臭みを消す
- 炊飯器で保温し寝かせることでうま味が増える
1.小豆を加えることで風味良く
小豆を加えることで、甘みや香ばしさが加わり奥深い味わいになります。また、小豆を加えることで、3日間保温し続けても腐らずに熟成させることができます。その理由は、玄米の糖質に小豆のたんぱく質やアミノ酸が反応することで生成される「メラノイジン」という褐色成分に、強い殺菌作用があるからです。
2.塩を加えることでお米独特の臭みを消す
塩を加えることで、玄米特有の臭みやえぐみがなくなり食べやすくなります。また、ほんのりと塩味がつくことや、水の吸収率が高まりふっくらと仕上がるため、美味しさもアップします。
3.炊飯器で保温し寝かせることでうま味が増える
炊飯器で3日間保温することで、日ごとにお米の粘度が強まりモチモチとした食感になっていきます。噛むほどに甘みを感じる美味しい玄米に仕上がります。
寝かせ玄米は冷凍保存できる?
寝かせ玄米は、3日間保温したあとは冷凍保存するのがおすすめです。冷蔵保存をすると、白米と同様にパサついてしまい風味が損なわれてしまう可能性があります。蓋付きの冷凍可能な保存容器に入れるか、1食分ずつラップに包んで冷凍保存しておきましょう。
食べるときは、1食分ずつ電子レンジで解凍します。冷凍した寝かせ玄米は、約2週間は美味しく食べることができます。
寝かせ玄米を作る際の材料選びのポイントとは
寝かせ玄米をご家庭で作るときの、材料選びのポイントをご紹介します。主なポイントは以下の通りです。
- 玄米は無農薬のものを選ぶ
- 小豆は乾燥したものを選ぶ
- 塩は天然塩のものを選ぶ
1.玄米は無農薬のものを選ぶ
高い栄養価が魅力の玄米ですが、胚芽やぬかには農薬が残りやすいと言われています。玄米を選ぶ際には、なるべく無農薬の自然栽培玄米を選ぶようにしましょう。
2.小豆は乾燥したものを選ぶ
小豆も玄米同様に、無農薬のものを選ぶようにします。また、スーパーなどには乾燥小豆と茹で小豆の2種類が販売されていますが、寝かせ玄米を作る場合は「乾燥小豆」を選びましょう。
3.塩は天然塩のものを選ぶ
塩には、加工されていない「天然塩」の他に、「精製塩」や「再生加工塩」などいくつか種類があります。天然塩は原料が海水のみであることが特徴で、最もミネラルが豊富に含まれています。
まとめ
「寝かせ玄米」は、酵素の力や小豆の栄養により、通常の玄米よりもさらに高い栄養価を誇る食品です。モチモチとした食感に仕上がるので、食べやすくなるのも特徴です。
寝かせるといったひと手間がかかりますが、その手間から得られるものは、健康維持やダイエットにおいてとても大きいものです。まずはいつもの白米を玄米に置き換えてみるところからはじめ、すでに玄米食を続けている人は「寝かせ玄米」にもぜひ挑戦してみてください。