玄米における「便通の改善効果」はどのくらい期待できるのか、気になる方は多いのではないでしょうか。腸内環境を整えて便通を良くすることは、健康維持やダイエット、美容において基本となり、とても重要です。本記事では、玄米における便通の改善効果について解説しながら、効果が出ない場合の原因についてもご紹介します。
玄米に含まれる食物繊維は便通の改善に効果的
玄米には、食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維は、消化吸収されずに大腸まで達する食品成分で、現在ではほとんどの日本人に不足しているといわれています。
「玄米を食べると便通が良くなる」といわれているのは、この食物繊維によるもので、腸内細菌のうちビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の割合を増やすことで、腸内環境を整える作用があるとされています。
玄米には2種類の食物繊維が含まれている
食物繊維には、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」という2つの種類があります。水溶性食物繊維は、水に溶けやすいという特徴を持ち、水に溶けるとゼリー状に変化し保水力が高まります。便が多く停滞している大腸は水分が失われた状態であるため、水溶性食物繊維を摂ることで便にうるおいを与えてスムーズな排便を促します。
不溶性食物繊維は、水に溶けにくく、腸内で水分を吸ってふくらむ性質を持ちます。便のかさを大きくすることで大腸を刺激し排便を促す他、腸内の有害物質を吸着して排出してくれるので腸内環境の改善に役立ちます。
玄米にはこのうち両方の食物繊維が含まれていますが、より豊富なのが不溶性食物繊維です。
玄米には白米の約6倍もの食物繊維が含まれている
白米と比較すると、玄米の食物繊維は約6倍もの量になります。このことが、玄米が健康に良いといわれる大きな理由の一つであり、便通の改善にも役立ちます。
食物繊維が多い食品には、他に豆類や芋類、きのこ類、海藻類などがありますが、これらの食品は現代の食事の中で不足しがちな食品でもあります。そんな中、白米を玄米に置き換えるだけで、約6倍もの食物繊維が摂取できることは、玄米の大きな魅力となります。
水溶性と不溶性のバランスが大切
食物繊維による整腸作用や便通の改善の効果を発揮するには、2つの種類をバランス良く摂取することも大切です。玄米に特に豊富なのは不溶性の食物繊維であるため、玄米と一緒に水溶性の食物繊維を多く含む食品を組み合わせるようにすると、玄米の効果を最大限に活かすことができます。
便通が改善されることで得られる効果とは?
便通を良くしたい場合、必ず考えなくてはならないのが腸内環境の改善です。腸内環境の悪化は、色やにおい、形状、頻度など便の状態に顕著に現れます。
腸は、食べ物の消化吸収や便を作り出し排出するという役割の他、身体の免疫細胞の約6割が存在するなど免疫機能の重大な役割を持つこともわかっています。腸を守ることは身体を守ることともいえるほど、腸の健康はとても大切です。
では、腸内環境が整い便通が改善されることは、具体的にどのような効果をもたらしてくれるのでしょうか。主な項目についてみていきましょう。
1.胃腸の機能を良くして代謝アップ
腸内環境が整い胃腸が正常に機能するようになると、食物の消化吸収が良くなり、全身の代謝の活性化に繋がります。さらに代謝が上がることで、エネルギーの消費が増え、痩せやすく太りにくい体質づくりへと繋がります。
2.肌荒れの解消
代謝が良くなり細胞の新陳代謝が上がることは、肌のターンオーバーを正常にすることにも繋がります。便通を良くして腸の機能を正常に保つことは、肌荒れの予防や解消などの効果も期待できます。
3.ぽっこりお腹の解消
腸内に多くの便が停滞すると、ぽっこりお腹の原因にもなり見た目にも悪影響をもたらします。また身体が重く感じ、イライラややる気がでないといったストレスの要因となることもあります。日常的にスムーズな排便があることは、健康的で綺麗な身体のラインを目指す上でも大切です。
玄米を食べても便通が良くならない原因は?
スムーズな排便を目指し玄米を取り入れているのにも関わらず、便通の改善が見られない場合もあります。それには、玄米の特徴をきちんと理解できていないことや、他に原因があることも考えられます。どのような原因が考えられるのか、よくある5つのパターンについて解説します。
1.消化不良を起こしてしまっている
玄米は、白米よりも食感が硬く噛み応えがある分、良く噛んで食べる必要があります。そうでないと、胃で消化しきれず消化不良を起こしてしまう可能性があります。食べ物が正常に消化されないまま腸内に送られてしまうと、水分が少なく硬いまま便となってしまい便秘になりやすくなります。
2.玄米の食べ過ぎによる不溶性食物繊維の撮り過ぎ
玄米には不溶性食物繊維が豊富に含まれていますが、この不溶性食物繊維は水分を吸収するという性質を持ちます。適切に摂取することで整腸作用を発揮してくれるのですが、不溶性食物繊維を多く摂りすぎると、腸内の水分がなくなり余計に便が硬くなってしまうこともあります。
あくまで白米を玄米に置き換えるということを忘れずに、食べ過ぎには注意が必要です。
3.玄米以外の食事に問題がある
便秘は、食物繊維の摂取量に限らず、極端な食事制限や偏り、頻度など様々な要因によって引き起こされます。
また食事面において特に見落としがちなのは、水分と脂質の不足です。便には適度な水分と脂質がないと、スムーズな排便は行われにくくなります。特にダイエット中に起こりがちなのは脂質の不足で、極端な油ものの制限が要因となることもあるので、何事も適切を心がけることが大切です。
4.玄米が体質に合っていない
玄米を食べていても便秘が改善されない原因の一つとして、体質に合っていないという場合も考えられます。生まれつき便秘の体質である方は、玄米の不溶性食物繊維により便のかさが大きくなりすぎることで、より悪化してしまうという可能性が考えられます。
水分や脂質を一緒に摂ることや、他の要因も意識した上で便秘の改善が見られない、または悪化してしまう場合は、玄米が体質に合っていないと考えると良いでしょう。
5.生活リズムや睡眠などの食事以外に問題がある
食事の他にも、睡眠不足や睡眠の質の低下、過剰なストレスなど、様々な原因が考えられます。便通の改善効果を期待する場合、玄米を取り入れるだけでなくその他の要因にも目を向けてみるようにしましょう。
玄米を食べて便通を良くしたい時に抑えたいポイント
玄米を食べることで便秘の改善を期待する場合、いくつかの抑えたいポイントがあります。効果を最大限に発揮させるために、きちんと理解して意識するようにしましょう。
1.消化不良を防ぐために吸水をしっかり行う
硬くて消化吸収されにくいという欠点を解消するために、玄米を炊くときには、浸水をしっかりと行うようにしましょう。中心部まで十分に吸水するためには、5~6時間以上の浸水が必要です。時間があるときは、夏場は8時間、冬は12時間以上の浸水時間が理想的です。
より柔らかく炊き上げることで、消化吸収が良くなり便秘改善の効果もアップします。
2.玄米と一緒に十分な水分補給をする
玄米を食べるときは、必ず十分な水分補給を忘れないようにしましょう。不溶性食物繊維は、腸内に十分な水分があってこそ効果が発揮されます。水分が足りないことでより便秘を助長する場合もあるので、玄米と水分はセットとして考えておくと良いです。
3.良く噛んで食べる
消化吸収を良くするためには、良く噛んで食べることも大切です。また、硬い食感や噛み応えは玄米の特徴の一つとして挙げられますが、これは咀嚼回数が増えることで満腹を感じやすいというメリットにも繋がります。
4.白米から徐々に切り替えていく
いきなり白米を全て玄米に置き換えるのではなく、一日一食からはじめたり、白米に少し玄米を混ぜたりするなど、徐々に切り替えるのもおすすめです。大切なのは、玄米が自分の体質に合っているかをきちんと確かめることです。身体が慣れていくためにも、自分の腸内環境と向き合いながら見極めていくようにしましょう。
5.玄米と組み合わせる食品を意識する
栄養価が高いといわれている玄米であっても、健康維持に必要な全ての栄養素を網羅しているわけではありません。玄米だけを食べていれば良いというわけではなく、やはりバランスよく食品を組み合わせて食べることが大切です。
便秘改善のために玄米食との組み合わせにおすすめの食品
では、具体的にどのような食品を組み合わせて食べるのが良いのでしょうか。便秘の改善のために、玄米と一緒に食べたいおすすめの食品について解説します。
1.水溶性の食物繊維を多く含む食品
玄米は特に不溶性の食物繊維が豊富であるため、バランスを良くするために、水溶性の食物繊維をおかずとして取り入れるとより便通改善の効果が期待できます。
水溶性食物繊維が多い食品には、昆布、わかめ、ひじきなどの海藻類や、大豆、おくら、モロヘイヤ、果物などがあります。海藻入りの味噌汁やサラダなどを一品加えたり、食後のデザートとして果物を食べたりするのもおすすめです。
2.適度な脂質を含む食品
スムーズな排便には、潤滑剤として働いてくれる適度な量の脂質も必要不可欠です。特にダイエット中は、脂肪の元となる油を極端に減らしがちですが、かえって便秘の原因になる場合もあります。
脂質というと料理に使う油そのものや調味料などを思い浮かべますが、食品自体にも含まれています。例えば、肉類や魚類、乳製品など、これらはたんぱく質源となる食品でもあるので、玄米との相性も抜群です。
3.腸内環境を整える発酵食品
納豆やキムチ、味噌、ぬか漬け、酒粕、ヨーグルト、チーズ、甘酒などの発酵食品も、玄米と同様に腸内環境を整える効果が期待できる食品として知られています。これらの食品も、玄米との相性は抜群で、日常の食事にも手軽に取り入れやすいおすすめの食品です。
玄米に含まれる食物繊維以外に豊富な栄養素とは
これまで玄米に豊富に含まれる食物繊維や、それによる便通改善の効果について解説してきましたが、玄米が身体に良いといわれるのは食物繊維によるものだけではありません。
同じお米でも、白米よりも玄米の栄養価が高い理由は、玄米が精製され白米となるときに取り除かれる「ぬか」や「胚芽」に栄養素が豊富に含まれているからです。つまり、玄米の栄養素のほとんどは「ぬか」や「胚芽」にあるため、その部分が取り除かれている白米にはないということです。
玄米に含まれる、食物繊維以外の栄養素とその効能についてもみていきましょう。
ビタミン類が豊富で美容効果も期待できる
玄米はビタミンB群も豊富で、特にビタミンB1は白米の約5.1倍、ビタミンB6は約3.7倍多く含まれています。ビタミンB1は、糖質の代謝をサポートするため、太りにくい身体作りに役立ちます。ビタミンB6は、アミノ酸の働きをサポートしたり、皮膚の抵抗力を増進させたりする働きを持ちます。
これらビタミンB群により体内の様々な代謝が促進されることで、疲労の回復や、ニキビや吹き出物を防ぐ美容などの効果も期待できます。
マグネシウムが豊富で骨や歯の健康維持に役立つ
マグネシウムは、カルシウムやリンとともに歯や骨を形成する働きや、様々な代謝をサポートする働き、精神の安定などの働きがあります。玄米には、そんなマグネシウムも白米の約4.7倍多く含まれています。
現代の欧米化した食事ではマグネシウムは不足しがちなので、主食である玄米で補うことで食事の栄養バランスが整いやすくなります。
鉄分が豊富で貧血の予防に役立つ
鉄分には、全身に酸素を運ぶ役割があり、不足すると鉄欠乏貧血を引き起こし集中力の低下や疲労感などの症状が現れます。成長期の子どもや、月経のある女性、妊娠中や授乳中の女性は特に積極的に摂りたい栄養素です。玄米には、鉄分も白米より約2.6倍多く含まれています。
このように、玄米には食物繊維をはじめとした様々な栄養素が豊富に含まれていて、それによる健康効果も期待できる優秀な食品であるといえます。
まとめ
玄米には、整腸作用があり便通を良くする効果が期待できる食物繊維が豊富に含まれています。腸内環境を見直すことは、全身の代謝や正常な生理機能の維持の基礎となるためとても重要です。
普段食べている白米を玄米に置き換えるだけで、手軽により多くの栄養素を摂取することができるので、健康維持やダイエット、美容において玄米はおすすめの食品の一つです。
ただし、徐々に取り入れていくことや、適度な脂質と水分摂取を忘れないなど、ご紹介した注意点やポイントなどもきちんと理解し、正しく取り入れていくようにしましょう。