五郎兵衛米とは?幻のお米と言われる理由や栽培のこだわりについてご紹介

五郎兵衛米

限定された希少な生産量とその美味しさから「幻のお米」とも言われる五郎兵衛米。高級料亭などでも扱われるほどのその魅力は、お米の栽培にとって恵まれた環境や生産者の数々のこだわりによって生み出されます。

本記事では、五郎兵衛米の特徴や歴史、栽培のこだわりなどと併せて、五郎兵衛米の美味しい炊き方についても解説します。

 

五郎兵衛米とは?

稲

五郎兵衛米(ごろうべえまい)とは、長野県佐久市内の旧浅科村の一部地域で栽培されている、コシヒカリの一種です。「五郎兵衛用水」の水を使って栽培していることから、その名が付いています。

五郎兵衛米の魅力は、お米1粒1粒に感じられるしっかりとした粘り気と、噛むほどに口の中いっぱいに広がる甘みです。また、炊きたての熱いうちが最も美味しく味わえるのはもちろん、冷めても美味しいのでおにぎりやお弁当に入れてもその美味しさが十分に感じられます。


「幻のお米」と呼ばれる理由

そんな五郎兵衛米が「幻のお米」とも呼ばれている理由には、お米を栽培するために使われる「水」に対するこだわりが関係しています。五郎兵衛用水の水は、八ヶ岳連峰の最北端に位置する「蓼科山(たてしなやま)」の標高1900mから湧き出た天然水を水源としています。この蓼科山からの清い天然水を贅沢に使って育てることができる田んぼは、この旧浅科村地域の中でもわずか約400ヘクタールしかありません。

そのため、大量に生産することができないことから「幻のお米」と呼ばれているのです。その希少さゆえに、全国の一般市場へ流通することも少なく、多くの高級料亭などで扱われています。


五郎兵衛米の歴史

五郎兵衛用水とは、江戸時代に「市川五郎兵衛真親(いちかわごろうべえさねちか)」という人物が私財とその生涯を投じて築いた、約20kmの歴史ある水路です。蓼科山を源流とする鹿曲川上流より用水路を作り、五郎兵衛新田を開発したことが始まりと言われています。

はるか昔、この地域は湖であったものの、山に囲まれていたことから八ヶ岳や浅間山の火砕流から守られていました。その上、湖に蓄積された強粘度の土壌がこの狭い地域に残り、このことが五郎兵衛米の美味しさを決める重要な要素の1つとなりました。

五郎兵衛米は、このようないくつもの努力や奇跡が重なってできた、まさに「幻のお米」なのです。


五郎兵衛米の美味しさを決める3つの要因

田んぼ

五郎兵衛米の美味しさは、お米の栽培にとって命とも言える「水」「土」「気候」の3つの要因が関係しています。1つも欠けることなく、全てが五郎兵衛米にしかない優良な条件を満たしているからこそ実現できるものです。

そんな旧浅科村ならではの自然からなる3つの要因について、1つ1つみていきましょう。

  1. 蓼科山(たてしなやま)から湧き出た天然水
  2. 強粘土質の土壌
  3. 昼夜の寒暖差

 


1.蓼科山(たてしなやま)から湧き出た天然水

水の中で育つ水稲にとって、水の純粋さは最も重要な要素の1つです。水の質が良いほど微生物の活動も活発になり、土までも良くしていきます。五郎兵衛米が栽培される水田には、蓼科山の標高約1900mから湧き出た天然水が贅沢に流れ込んでいて、そのことがお米の美味しさを決める重要な要因となっています。


2.強粘土質の土壌

2つ目の要因は、旧浅科村特有の土壌の粘度の高さです。五郎兵衛米は、コンバインの寿命が通常の半分になるほどの強粘土質の土壌で栽培されています。粘度が高いことで、蓼科山からのミネラルをたっぷり含んだ天然水や肥料をしっかりと保持できるため、稲にたくさんの栄養が行き届きます。

無駄なく栄養を蓄えたくましく育った稲からは、炊いたときに強い粘り気や甘みを生み出す美味しいお米ができるのです。


3.昼夜の寒暖差

3つ目の要因は、山に囲まれた長野県の土地がもたらす、1日の寒暖差です。標高の高い長野県は、日中は日本においてトップレベルの日射量となります。そしてその中でも、この佐久市旧浅科村地域はさらに上位に値するため、日中の気温はグングン上昇する一方、太陽が山に隠れ始める夕方以降になると気温はみるみる下降していきます。

この自然に起こる寒暖差に耐えながら、太陽の光を存分に浴びて力強く根を張って育つことで、甘みを蓄えた味わい深いお米が育つのです。

またこのような爽やかな気候で育つお米は、稲の病気であるいもち病の心配がありません。そのため、農薬を極限まで減らして栽培することができます。


五郎兵衛米の美味しさへのこだわり

五郎兵衛米

五郎兵衛米の美味しさは、自然が織りなす「水」「土」「気候」が大いに関係しているものの、もちろんそれだけではありません。土地や環境からの恵みに甘えることなく、生産者が数々の努力やこだわりを持って栽培することで、五郎兵衛米の美味しさは実現されています。具体的な内容についてみていきましょう。

  1. 田んぼを耕す回数を増やす
  2. お米の品質を守る緻密な施肥設計
  3. 特別栽培米として生産されている
  4. 植える株数を制限し、一本一本を大切に
  5. 畦畔(けいはん)をきちんと管理し、害虫から守る

 


1.田んぼを耕す回数を増やす

美味しいお米を栽培するには、稲の根張りを上手に行うことが重要です。そしてそのために必要なのは、稲の根がきちんと呼吸ができる環境づくりであり、土の中に酸素を十分に含ませなければなりません。

五郎兵衛米が育つ田んぼは、通常の倍以上となる年4回に渡り耕しているそうです。そうすることでより多くの酸素が土の中に供給され、稲はしっかりと丈夫な根を張ります。田んぼの特徴や環境を見極めながら、土と稲の両方にとって負担の少ない土づくりを目指しています。


2.お米の品質を守る緻密な施肥設計

与える肥料は緻密に設計し、窒素が過剰に含まれてしまわないようにしています。肥料を多く与えるほど良いということは決してありません。

むしろ窒素が過剰に含まれると稲が細長く伸びてしまい、倒れてしまう危険性があります。するとお米の品質は著しく落ちてしまうため、そうならないために緻密な施肥設計を行い、お米の美味しさや品質を保っています。

また、追肥は出穂の18日前と決め、お米の収穫量を増やすための追肥は行いません。お米の収穫量は、その年の天候に左右されるのが基本。その中で、どんな天候でも安定した品質と美味しさを目指すことを最も大切にしています。


3.特別栽培米として生産されている

五郎兵衛米は、農林水産省が定める「特別栽培米に係る表示ガイドライン」に従って栽培された、「特別栽培米」として生産されているお米です。

特別栽培米とは、減農薬栽培などの特色のある方法で栽培されるお米のことです。各地域で慣行的に行われる、節減対象となる農薬や化学肥料の使用状況と比較し、節減対象農薬の使用回数が5割以下、化学肥料の窒素成分量が5割以下であることが義務付けられています。

これらが定められる基準は各地域で異なりますが、その中で五郎兵衛米の栽培地にあたる長野県はより厳しい基準が定められている都道府県の1つです。例えば1つの農薬を1成分とすると、使用可能な農薬は全国基準で24成分であるところ、長野県では約半数の12成分しか認められていません。つまり、長野県で特別栽培米を生産するには、さらにその5割の6成分以下で栽培しなければなりません。

厳しい基準をクリアした五郎兵衛米は、美味しいだけでなく、安心安全な栽培方法にもこだわって作られたお米なのです。


4.植える株数を制限し、一本一本を大切に

五郎兵衛米となる稲の栽培は、「疎植栽培」という方法で行っています。疎植栽培とは、株と株の間の間隔を通常の約2倍である26cm~30cmほど広く保ち苗を植える方法です。一般的には一坪に70株植えることができますが、五郎兵衛米の栽培では一坪に50株しか植えません。

この方法で栽培することで、一本一本の茎が太く倒れにくい丈夫な稲が育ちます。また太陽の光が入りやすくなるため、光合成がしやすく風通しも良くなります。植える苗の株数が減る分、一本一本を大切に育てています。


5.畦畔(けいはん)をきちんと管理し、害虫から守る

畦畔とは、田んぼの水が外に流れてしまわないようにするための盛り土部分を指します。田んぼの周りを囲うように作ってあるため、お米の品質保持や美味しさのためにはこの畦畔の管理も重要です。

五郎兵衛米の栽培では、畦畔に生い茂る畦草を稲刈りの時期までに5回以上狩ることで、稲の病気の原因や害虫から守っています。また畦畔をきちんと管理することは、稲穂が実る日本ならではの美しい風景を守るためにも、欠かせないこだわりです。


五郎兵衛米の美味しい炊き方

炊飯

一粒一粒がしっかりとしていて美味しい五郎兵衛米を、より美味しく味わうための炊き方のコツをご紹介します。基本的には一般的なお米の炊き方と同様ですが、正しいお米の研ぎ方や炊き方を今一度おさらいしてみましょう。


しっかりと研ぐ

お米の表面に付いた糠や汚れ、タンパク質を落とすために、水でしっかりと研ぎます。特に1番最初の水は濃い白色に濁り、最も汚れが浮き出ています。お米は最初に触れた水分を良く吸収してしまうため、なるべく手早く水を取り替えるようにします。このときの水は、ミネラルウォーターを使用するとより雑味がなく美味しく炊きあがります。

水を注いで手のひら全体でお米を底に押し付けるようにして研ぎ、水が澄んでくるまで3~4回繰り返します。タンパク質がお米の表面に残っていると、炊きあがりの風味が悪くなってしまうため、手早くしっかりと研ぐことが重要です。


浸水を行う

夏場は約30分、冬場は約60~90分を目安に、炊く前に十分に浸水することを忘れずに行います。浸水を行うことで、米粒の芯まで水が染み込みふっくらと炊きあがります。浸水時にもミネラルウォーターを使用すると、さらに美味しく仕上がります。


水加減は少し少なめに

お米を炊くときの水加減は、基本はお米容量の約1.1倍~1.2倍が目安です。品種により、お米自体の水分量や米粒の大きさが異なるため、それぞれに合った分量や好みの固さを見つけてみましょう。

五郎兵衛米は、基本よりも少し少なめの水加減で炊くのがおすすめです。


炊けたあとの保管も大切

炊きあがったあとは、すぐに蓋を開けずに10分程度蒸らすことでよりふっくらとした仕上がりになります。炊飯器によっては、工程の中に蒸らす時間が組み込まれていることもあります。

蒸らしが終わったあとは、ごはんの粒を潰さないようにしゃもじで全体に空気を含ませるように混ぜます。上のごはんと底のごはんが混ざり合うようなイメージで、切るように丁寧に混ぜるのがコツです。

また、炊飯器で炊いた場合、保温機能で長時間保管するとお米の美味しさはどんどん損なわれてしまいます。嫌なにおいやごはんの変色の原因にもなるので、なるべく早めに食べきるのがおすすめです。余ってしまう場合は、なるべく早く1食分ずつラップに包み、十分に冷ましてから冷凍庫で保管します。食べる前に電子レンジで加熱すると、再びふっくらとした美味しいごはんになります。


五郎兵衛米の美味しい食べ方とは

おにぎり

粘り気が強く甘みがあるのが魅力の五郎兵衛米は、そのままごはんだけで食べてもその美味しさを十分に味わうことができます。お米の美味しさが感じられるシンプルな食べ方がおすすめです。


おにぎりや塩気のある漬物と合わせるのもおすすめ

炊きたてはもちろん、冷めても美味しい五郎兵衛米は、おにぎりやお弁当に入れても美味しく味わうことができます。また、お米自体に甘みがあるので、塩気がある漬物や梅干し、のりの佃煮などのいわゆるごはんのお供とももちろん相性は抜群です。


まとめ

五郎兵衛米

五郎兵衛米の美味しさは、蓼科山からの清流、強粘土質な土壌、昼夜の寒暖差、全国トップクラスを誇る日射量などといった自然が作り出す数々の恵まれた環境に加え、稲一本一本を大切にしようという生産者のこだわりが詰まった栽培方法によって実現されています。

幻のお米と言われる希少性や、農薬、化学肥料をむやみに使用しない栽培方法も、その美味しさと安心安全を守るためのこだわりの1つとも言えるでしょう。

そんな、強い粘り気と噛むほどに口の中に広がる甘み、冷めても損なわない美味しさが魅力の五郎兵衛米。ご紹介した美味しい炊き方や食べ方などもぜひ参考にし、その魅力を存分に感じてみてください。

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